研究概要

本領域では、比較的少数のニューロン集団からなる「メゾスコピック神経回路(メゾ回路)」を、従来研究が困難であったミクロとマクロの中間層に切り込むことを可能にするモデル機能回路として捉え、その解析を通じて脳の情報処理基盤を探ります。このため、回路特異的遺伝子操作、光生理学、大規模シミュレーションなどの最新鋭の実験・理論技術を備えたトップランナーを集結し、包括的な脳回路研究を推進します。実験家と理論家が協力し、
(1)メゾ回路を同定し、その形態や活動をリアルタイムで可視化する
(2)メゾ回路に摂動を与える(例:線維や配線のパターンを変化させる、光生理学により個々のニューロンを活性化・阻害する)
(3)入出力関係の変化を多点並行記録する
(4)記録したデータの時空間パターンが含む情報を解析する
の4つのステップで研究を進めることで、分子と細胞という物質基盤が複雑化を通じて情報処理機能を獲得するプロセスを探ります。

本領域の最大の特徴は、多様な革新的技術をもつ異分野の研究者を集結することです。総括班の主導のもと異分野間の有機連携に基づいた共同研究を促進し、計画班員が有する多岐に富む実験技術や数理理論を相補的に活用することで、これまで困難であったメゾ回路研究を強力に推進します。さらに、計画研究を補完する優れた公募研究(ミクロ・マクロへの相互展開、病態脳や脳型デバイスへの応用など)を採用し、メゾ回路を中心とした新しい脳神経科学の枠組み(メゾ神経科学)を構築することを目指します。